こんにちは、「こころの相談室UP」代表の松元大地です。
「やらなければいけないのに、どうしても着手できない」 「中途半端になるくらいなら、やらないほうがマシだと感じてしまう」
仕事や勉強の場面で、こうした 「動けなさ」 に悩むことはありませんか? これは、いわゆる「先延ばし癖」として片付けられがちですが、その背景には 「完璧主義」 が隠れていることがよくあります。
今回は、「努力家なのに燃え尽きてしまう」「完璧を目指すあまり動けなくなる」という現象について、2017年に発表された大規模な研究(メタ分析)をもとに解説します。
結論から言うと、あなたを動けなくさせているのは「高い目標(努力)」ではなく、「失敗への過敏さ(懸念)」 である可能性が高いです 。これは性格の問題ではなく、ケア可能な心の反応なのです。
一般的に完璧主義というと、「質の高い仕事をする人」というポジティブなイメージと、「細かすぎて疲れる人」というネガティブなイメージの両方がありますよね。
心理学の研究でも、完璧主義は大きく 2つの次元 に分けて考えられています 。
この2つは似ているようで、メンタルヘルスに与える影響が全く異なります 。
Limburgら(2017)の研究チームは、完璧主義と精神病理(心の不調)に関する284の研究(合計57,000人以上のデータ)を統合して分析しました 。
その結果、以下の重要な事実が明らかになりました。
うつ病、不安症、強迫症(OCD)など、多くのメンタルヘルスの問題において、「完璧主義的懸念(失敗への恐れ)」の方が、「努力(高い基準)」よりも圧倒的に強く関連している ことがわかりました 。
一方で、「完璧主義的努力(高い目標を持つこと)」自体は、うつや不安との関連が弱いか、あるいはそれほど有害ではない可能性が示されました (ただし、摂食障害の場合は例外 で、両方がリスクになります )。
つまり、あなたが動けなくなったり、つらいと感じたりするのは、「目標が高いから」ではなく、「ミスを許せない」「失敗=終わりだ」という「懸念」のブレーキが強すぎるから であると言えます 。
僕の臨床経験(CBT)と研究知見を合わせると、次のような悪循環が見えてきます。
この論文でも、完璧主義は特定の病気だけでなく、さまざまな不調に共通する「トランスダイアグノスティック(診断横断的)」なリスク要因 であると結論づけています 。
もしあなたが、「完璧主義で動けない」と悩んでいるなら、それは性格を変える必要はありません。「懸念(ブレーキ)」との付き合い方 を変えるだけでいいのです 。
「高い目標を持ってはいけない」と思う必要はありません 。 「今、自分が止まっているのは、目標が高いからではなく、『怒られたくない』『がっかりされたくない』という 恐怖が強まっているからだ」と気づくことが第一歩です。
完璧主義の人は「不完全なものを出すと評価が下がる」と信じています。 あえて 「60点の出来」 で上司に見せたり、早めに提出したりしてみてください。意外と「これで十分だよ」「早くて助かる」と言われる経験を積むことで、「100点でなくても大丈夫(懸念の修正)」という学習が進みます。
ADHD傾向のある方や、先延ばし癖がある方によくお伝えするのは、「完了」を目指さず 「着手」だけを目指す ことです。 「資料を完成させる」ではなく、「ファイルを開いて1行だけ書く」を目標にします。動き出しさえすれば、不安(懸念)は自然と下がっていくことが多いものです。
完璧主義で動けなくなるのは、あなたの意志が弱いからでも、性格が悪いからでもありません。
「失敗への過剰な恐れ(完璧主義的懸念)」 が、本来の能力を発揮するのを邪魔しているだけです 。
高い目標を持つあなたのエネルギーを、自分を責めることではなく、前に進む力に変えていくために。 一人で抱え込まず、専門家と一緒に 「心のブレーキ」を緩める練習 をしてみませんか?
出典 Limburg, K., Watson, H. J., Hagger, M. S., & Egan, S. J. (2017). The Relationship Between Perfectionism and Psychopathology: A Meta-Analysis. Journal of Clinical Psychology, 73(10), 1301-1326.