こんにちは。こころの相談室UPの松元大地です。
パニック症に悩む皆さんから、「お薬を飲むべきか、カウンセリングを受けるべきか迷っている」というご相談をよくいただきます。
結論からお伝えすると、最新の診療ガイドラインでは、お薬(𝗦𝗦𝗥𝗜などの抗うつ薬)も、認知行動療法などの心理療法も、どちらも治療として提案されています 。ただし、お薬と心理療法のどちらがより好ましいかや、両方を一緒に受けた方が良いかどうかについては、まだ明確な推奨はないとされています 。
今回は、日本不安症学会と日本神経精神薬理学会が合同で作成し、𝟮𝟬𝟮𝟱年に『不安症研究』という学術誌で発表された『パニック症の診療ガイドライン』という資料をもとに、現在推奨されている治療法についてご紹介します 。
このガイドラインによると、お薬の治療としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(𝗦𝗦𝗥𝗜)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(𝗦𝗡𝗥𝗜)が提案されています 。一方で、即効性のある抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)については、長期間使うと依存や離脱症状といった問題があるため、今回のガイドラインでは有効性についての推奨が見送られています 。
また、心理療法(精神療法)としては、パニック症に特化した「認知行動療法」を、熟練した治療者のもとで一連の手順に沿って受けることが提案されています 。認知行動療法は、身体の感覚に対する「気を失う」「死んでしまう」といった破局的な解釈を修正し、安全行動や回避を減らしていく悪循環を断ち切るためのアプローチです 。
興味深いことに、お薬と心理療法の「どちらが優れているか」、あるいは「両方を併用したほうが良いか」については十分なデータがなく、特定の推奨はないとされています 。副作用の少なさを重視するか、ご自身の生活スタイルを重視するかなど、患者さんご自身の希望や価値観に合わせて選択することが大切だと言えそうです 。
ここからは、僕の臨床での見立てをお話ししますね。
ガイドラインにもあるように、お薬と認知行動療法のどちらを選ぶかは、皆さんの状況やご希望によって変わると思います 。お薬は副作用の心配があるものの、多くの医療機関で保険診療の範囲内で受けやすいというメリットがあります 。一方で、認知行動療法は副作用などの害が少ない反面、専門的に実施している機関が限られていたり、時間や費用がかかったりするという現実的なハードルがあります 。
僕の臨床では、まずは医療機関で適切にお薬の力を借りながら心身の土台を整え、少し落ち着いてきたタイミングで、行動範囲を広げるために認知行動療法を取り入れていく、という形をとる方が多いように感じます。
パニック症のメカニズムとして、動悸や息苦しさといった身体の感覚に過敏になり、「また発作が起きるのでは」という予期不安が強まることが知られています 。この予期不安によって、電車などの公共交通機関に乗るのを避けたり(回避)、常にドアのそばに立ったり(安全行動)するようになります 。 しかし、こうした回避や安全行動が、結果的に「苦手な状況への不安」を長引かせる条件づけとなってしまうことがあります 。
現実的な工夫としては、まずはご自身の身体の感覚と、それに伴う「怖い」という考えに気づくことから始めてみてはいかがでしょうか。「あ、今ドキドキしているな」「気を失うかもと考えているな」と、少しだけ客観的に観察してみるのです。無理に不安を消そうとせず、まずは「そこにあるもの」として認めることが、悪循環を抜け出す小さな第一歩になると思います。
パニック症の治療には、お薬と認知行動療法という2つの確かな選択肢があります 。どちらが正解ということはなく、あなたの生活スタイルやご希望に合った方法を、主治医や心理士と一緒に選んでいくことが大切です 。 もし、「自分の場合はどう進めていけばいいのだろう」と迷われたときは、いつでもご相談くださいね。一緒に無理のないペースで、あなたが大切にしたい生活を取り戻すお手伝いができればと思います。
【参考文献】
日本不安症学会・日本神経精神薬理学会(𝟮𝟬𝟮𝟱)パニック症の診療ガイドライン.不安症研究,𝟭𝟳(𝟭),𝟮𝟮-𝟭𝟭𝟭.