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大人ADHDの先延ばしが“生活の質”を下げる理由|やる気の問題ではなかった

「やる気はあるのに、どうしても仕事に手がつけられない」 「ギリギリまで動けない自分に、毎回ひどい自己嫌悪を感じる」

あなたは今、そんな 「先延ばし」 の苦しみを抱えていませんか? 頭では「やらなきゃ」と分かっているのに体が動かない。その結果、仕事だけでなく、生活全体が重苦しく感じてしまう。

もしあなたが 大人のADHD(注意欠如・多動症) の傾向を感じているなら、その生きづらさの正体は「あなたの性格」や「ADHDの症状そのもの」ではないかもしれません。

今回は2025年の最新研究から、ADHDと生活の質(QoL)の関係における 「意外な真犯人」 についてお話しします。 結論から言うと、 「意志の問題」ではありません。

「ADHDだから辛い」ではない?最新研究の発見

これまで、「ADHDの特性(不注意や多動)があるから、生活の質が下がるのは仕方がない」と考えられがちでした。 しかし、2025年に発表された最新の研究(Netzer Turgeman & Pollak)が、その定説に希望ある一石を投じています

この研究では、132名の成人を対象に、ADHD症状、先延ばし傾向、そして生活の質の関係を詳しく分析しました。 その結果、驚くべきことが分かったのです。

研究でわかった「完全媒介」という事実

専門用語でこれを 「完全媒介」 と言います。 簡単に言えば、 「ADHDという特性そのものがあなたを苦しめているのではなく、特性によって引き起こされる『先延ばし行動』が、生活の質を下げている主原因だった」 ということです。

これは、身体の健康、心の健康、人間関係、生活環境といった、あらゆる領域で確認されました

なぜこれが「希望」なのか?

この結果は、私たちにとても大切なことを教えてくれます。

  1. 「意志が弱いから」ではない 生活がうまくいかないのは、あなたが怠け者だからでも、甘えているからでもありません。ADHD特性によって起きやすい 「先延ばし(不合理だとわかっていても遅らせてしまうこと)」 というメカニズムが動いているだけです。
  2. 診断名にとらわれなくていい 「自分はADHDだから一生生きづらいんだ」と諦める必要はありません。脳の特性そのものを変えられなくても、 「先延ばし」という行動パターンに対処さえできれば、生活の質は劇的に改善できる 可能性があるのです。

支援の焦点は、もう「診断」ではありません。「行動プロセス」です。

臨床の現場から:先延ばしをハックするTo Do

臨床の現場から:先延ばしをハックするTo Do

僕の相談室(UP)でも、「やる気はあるのに動けない」というご相談は後を絶ちません。 意志の力で自分を奮い立たせるのではなく、 実行機能(脳の司令塔) を助ける工夫を取り入れましょう。

1. 「着手」のハードルを極限まで下げる

先延ばしは、課題が「巨大な壁」に見えるときに起こります。 「企画書を書く」ではなく、「PCの電源を入れる」「ファイルを開く」までを目標にしてください。脳は動き始めさえすれば、後からやる気がついてくるようにできています。

2. 10分だけタイマー法(許可を出す)

「最後までやらなきゃ」と思うと脳はフリーズします。「10分だけやって、嫌ならやめてもいい」と自分に許可を出しましょう。終わりの時間が見えると、脳は過剰な警戒を解きやすくなります。

3. スモールステップで「できた」を記録する

先延ばしをしてしまった日でも、自分を責めるのは逆効果です。自己嫌悪は次の先延ばしを生みます。 「今日はメールを1通返せた」「お皿を1枚洗った」など、できたことに目を向けましょう。自己効力感の回復が、次の行動へのガソリンになります。

まとめ

あなたの生活の質を下げているのは、あなたの人間性ではありません。「先延ばし」という行動パターンです。 そして行動パターンは、認知行動療法(CBT)や環境調整によって、いつからでも変えていくことができます。

「一人ではどうしても最初の一歩が出ない」「自己嫌悪のループから抜け出せない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。 あなたの脳のクセに合った、無理のない「取扱説明書」を一緒に作っていきましょう。

出典

先延ばしのメカニズムを行動療法で変えてみませんか?

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