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お薬とカウンセリング、どう使い分ける?「併用」が回復を早める科学的理由

はじめに

心療内科に通ってお薬を飲んでいるけれど、なかなか生活のしづらさが変わらない。 あるいは、カウンセリングに興味はあるけれど、主治医の先生に悪い気がして言い出せない。 そんな風に一人で抱え込んでいませんか?

実は、多くの心理学研究においてお薬とカウンセリングの併用が、うつや不安の改善、そしてその後の人生の質を高めるために有効である可能性が示唆されています 。

今日は、公認心理師の視点から、実際の研究データを交えて「医療と心理の上手な使い分け」についてお話しします。

本来、お薬とカウンセリングは対立するものではなく、互いに補い合うパートナーなのです。

科学が示す「併用」のメリットと適用

これまでに多くの研究者が、薬物療法と心理療法の組み合わせについて調査を行ってきました。ここでは、信頼性の高い3つの研究知見をご紹介します。

まず、Cuijpersら(2009)によるメタ分析(過去の複数の研究を統合して解析したもの)によると、うつ病の治療において、心理療法単独で行うよりも、薬物療法と組み合わせた「併用療法」の方が、統計的に有意に優れていることが示されました 。ただし、その効果量(d = 0.35)は小さく、著者らは臨床的な意義については慎重な見方も示しています

また、症状が消えることだけがゴールではありません。 Kamenovら(2017)の研究では、単にうつ症状を減らすだけでなく、社会的な「機能(仕事や家事などができること)」や「生活の質(QoL)」を改善する上でも、併用療法が単独療法よりも優れた結果を出していると報告されています 。こちらも効果量は小程度(g ≒ 0.3〜0.4)ではありますが、生活全体の質を高める助けになることがわかっています

さらに、再発予防の観点からも重要なデータがあります。 GuidiとFava(2020)の研究では、急性期にお薬で治療して反応があった後に、認知行動療法などの心理療法を追加して行う「順次的併用」のモデルを検証しています 。この研究では、回復後に心理療法を追加することで、うつ病の再発・再燃のリスク比が𝟬.𝟴𝟰となり、予防効果が高まることが示唆されました

これらの研究で示されている効果差は小〜中程度であり、すべての方に併用が必要というわけではありませんが、症状が長引く場合や再発予防の段階では心理療法を追加することで有効性が高まりやすいことが報告されています

僕の臨床での見立て:役割分担で考える

僕の臨床経験からも、お薬とカウンセリングは「役割分担」が明確であると感じています。これをイメージしやすいように、「骨折の治療」と「リハビリテーション」に例えてみましょう。特に先ほどのGuidiとFavaの研究にある「順次的併用」のイメージに近いものです

お薬の役割(ギプスで守る)
お薬は、いわば骨折した直後の「ギプス」や「痛み止め」の役割を果たします。 心が折れそうなほど辛い時、まずは脳や神経の興奮を鎮め、患部を固定して守ることで、安全に休める状態を作ります。骨がくっつくまでの間、痛みを和らげ、悪化を防ぐために、医療の力は非常に重要です。

カウンセリングの役割(リハビリで動ける体へ)
一方で、ギプスが外れて骨がくっついたとしても、長い間動かしていなかった筋肉は弱まり、関節は固まっています。そのまま急に走ろうとすれば、また転んで怪我をしてしまうかもしれません。 ここからは「リハビリ」のプロセスです。認知行動療法などの心理療法は、理学療法士と一緒に、日常生活を送るための筋力を取り戻し、再発を防ぐための「体の使い方(思考や行動のパターン)」を身につける作業に似ています。

お薬でしっかりと守って回復を待ち、その後にカウンセリングでしなやかに動ける心を整えていく。このステップを踏むことで、長く安定した生活を目指せると僕は考えています

「勝手に主治医に連絡する」ことはありません

当相談室では、現在心療内科や精神科に通院中の方のご相談も歓迎しています。

その際、皆さんが心配されるのが「カウンセラーが勝手に主治医に連絡したり、情報を流したりするのではないか」という点です。 どうぞご安心ください。当相談室では、ご本人の同意なく医療機関に連絡を取ることは原則としてありません(自傷他害の恐れがある緊急時を除きます)。

僕のスタンスは、あなたの「黒子(サポーター)」です。 診察室で主治医の先生にうまく伝えられない辛さをどう言語化するか、薬の調整や副作用の悩みをどう相談するか。そういった「主治医との付き合い方」も含めて、あなたと一緒に作戦会議を行います。

医療を味方につけながら、自分の力で生活をより良く変えていく。 そのための具体的な一歩を、ここから一緒に踏み出してみませんか?

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References

Cuijpers, P., van Straten, A., Warmerdam, L., & Andersson, G. (2009). Psychotherapy versus the combination of psychotherapy and pharmacotherapy in the treatment of depression: A meta-analysis. Depression and Anxiety, 26(3), 279–288. https://doi.org/10.1002/da.20519

Guidi, J., & Fava, G. A. (2020). Sequential combination of pharmacotherapy and psychotherapy in major depressive disorder: A systematic review and meta-analysis. JAMA Psychiatry, 78(3), 261–269. https://doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2020.3650

Kamenov, K., Twomey, C., Cabello, M., Prina, A. M., & Ayuso-Mateos, J. L. (2017). The efficacy of psychotherapy, pharmacotherapy and their combination on functioning and quality of life in depression: A meta-analysis. Psychological Medicine, 47(3), 414–425. https://doi.org/10.1017/S0033291716002774