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思春期の心の困りごとと認知行動療法

はじめに

人生の中でも特に動きが多いと言える時期があります。それが「思春期」と呼ばれる時期です。思春期は生物学的な成熟と共に精神的、社会的な変化が起こる、まさに人間の成長と自己形成の中心となるフェーズです。通常、思春期は10歳から19歳までの間に発生するとされています。しかし、個々の体験は大きく異なるため、これらの年齢範囲はあくまで一般的なガイドラインであり、それぞれの個人によって少し早かったり遅かったりします。

思春期の意義は非常に深いです。この時期は、人間が子どもから大人へと移行するための、一種の「準備期間」でもあります。また、自己認識の形成、自立の探求、人間関係の深化など、精神的、社会的な成長が加速する一方で、思春期には多くの挑戦が伴います。この時期に起こる変化は、生涯にわたる自己の理解と自己評価に影響を及ぼす可能性があるため、非常に重要です。

思春期には心身の変化が顕著に見られます。身体的な成長スパート、性的成熟(第二次性徴)、そして脳の急速な発達など、生物学的な変化が顕著です。また、思春期は自我とアイデンティティの発展、価値観の探求、そして感情的な深化と複雑さの増加といった心の変化も伴います。これら全てが合わさることで、思春期はしばしば混乱と困惑の時期ともなります。

しかし、この混乱は成長と自己発見の一部であり、新たな視点と理解を持つ機会を提供します。思春期に起こるこれらの変化を理解し、対処することができれば、これは人生の中で最も重要な期間となる可能性があります。

思春期の心の困りごと

  1. 自己イメージの変化
    思春期には自己イメージが大きく変化します。体の変化、新たな興味や能力、友人や大人たちの期待などが絡み合い、若者は自己認識を再評価し始めます。その過程で、自己イメージに関する不安や混乱が生じることがあります。認知行動療法(CBT)はここで役立ちます。思考パターンを認識し、それが感情や行動にどのように影響するかを理解することを促し、更に健全で建設的な自己イメージを形成するのを助けます。
  2. 社会的圧力との戦い
    社会的期待や規範に対するプレッシャーは思春期に一層強くなります。これは学校の成績、外見、人間関係、将来の職業など、多くの側面に及びます。CBTはこのようなプレッシャーとの戦いをサポートします。ストレス管理技術や問題解決スキルの訓練を通じて、思春期の若者はこれらのプレッシャーを乗り越える戦略を学びます。
  3. ピアプレッシャー:友達との関係
    思春期は友人との関係がより重要になる時期です。ピアプレッシャー、つまり友人からの圧力は、思春期の心の困りごとの一つであり、これは自分自身や行動に対する不安を引き起こすことがあります。CBTは、この問題に取り組むのに有効な手段を提供します。自己主張スキルの向上、感情管理の技術、そして健全な関係性の維持方法を学ぶことが可能です。
  4. 学業のプレッシャー
    思春期の学生は、成績のプレッシャーや期待値、進学に対する不安など、学業に関連するストレスに直面します。CBTは、これらのプレッシャーに対処するための技術を提供します。例えば、時間管理や目標設定、リラクゼーションテクニックなどを通じて、学業のストレスを効果的に管理する方法を学ぶことができます。
  5. 自己評価と自己効力感の問題
    思春期には自己評価と自己効力感、つまり自分自身が何を成し遂げられるかについての信念が問われます。これは自信の欠如、自己否定、達成感の欠如につながることがあります。CBTは、これらの問題に対処し、よりポジティブな自己評価と自己効力感を育む手助けをします。思考のパターンを再評価し、挑戦に対する新たな視点を提供します。
  6. 性的自認と性的指向の混乱
    思春期は性的自認と性的指向についての理解が深まる時期でもあります。これはしばしば混乱や不安を引き起こし、性的マイノリティの若者にとっては特に困難な場合もあります。CBTは、これらの問題を対処し、性的自認と性的指向についての自己理解を深めるのに役立ちます。個々の感情と思考を探求し、それらを受け入れることを促し、その結果、自分自身に対する理解と受け入れを深めるのに役立ちます。

研究の紹介

認知行動療法(CBT)は、小児・青年の不安障害に対する有効な治療法として認識されています。CBTは、子どもや青少年がより自立的で適応的な行動を実現するための、怒りの調節や社会的問題解決のスキルを提供します。

ここで紹介するのは、これに関する研究で得られた主な知見です。

  1. CBTは小児期の不安障害の治療に効果的であることが実証されています。
  2. 個人に対するCBTは、待機療法や通常の治療よりも優れた結果を示します。
  3. CBTは、不安、うつ病、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害など、子どもや青少年が抱えるさまざまな精神的健康問題の治療に有効です。
  4. 不安を持つ青少年に対するCBTへの親の関与は、治療の結果を改善する可能性があります。
  5. CBTは、児童・青少年の精神的健康の改善に寄与することが確認されています。

全体的に見て、CBTは不安障害やその他の精神衛生上の問題を抱える子どもや青少年にとって有望な治療法と言えます。CBTは、症状を管理し、全体的な幸福感を向上させるために必要なスキルを提供する手段なのです。

まとめ

本ブログでは、生命の成長過程で重要な段階とされる「思春期」に焦点を当てています。思春期は、生物学的な成熟を背景に、精神的・社会的な変化が起こる期間で、これは人間の成長と自己形成に大きく寄与します。しかし、この時期は混乱と困惑の象徴でもあります。

特に、自己イメージの変化、社会的圧力、ピアプレッシャー、学業のプレッシャー、自己評価と自己効力感の問題、性的自認と性的指向の混乱などが、思春期の若者たちが直面する一連の困りごととして取り上げられました。こうした問題への対応として、認知行動療法(CBT)の可能性が示唆されています。

研究によれば、CBTは小児・青少年の不安障害に有効であり、自立的で適応的な行動を可能にするスキルを提供するとの結論が得られています。その他の精神衛生上の問題にも対応可能で、全体的な幸福感の向上に貢献することが期待されています。

思春期の困難は、成長と自己発見の一部であり、CBTの活用によってこれらの困難を克服し、思春期を有意義な成長期とする道が開かれると言えます。

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