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ASD(自閉スペクトラム症)の症状をどう理解する?6つの理論モデルをやさしく解説!

はじめに

自閉スペクトラム症(ASD)って、聞いたことはあるけれど「実際どんな特徴があるの?」と思ったことはありませんか?

ASDは、他の人とのコミュニケーションや関係づくりが難しかったり、特定のことに強いこだわりがあったり、音や光に敏感すぎたりする特性を持つ神経発達のひとつ。人によってその特徴は本当にさまざまです。

そんなASDの多様な特徴を理解するために、これまでにさまざまな「理論モデル」が提案されてきました。今回は、研究の中でも注目されている6つのモデルをわかりやすく紹介します!

他人の気持ちが読みにくい?「心の理論(ToM)モデル」

まずは一番有名な理論「心の理論」から。

このモデルでは、「他の人には自分と違う考えや気持ちがある」ということを理解する力が弱いことが、ASDの特徴につながると考えます。たとえば、ジョークが伝わりにくかったり、相手の表情から気持ちを読み取るのが難しかったりすることがあります。

💡注目ポイント:
「サリーとアン課題」という実験で、ASDのある子どもが他者の誤った信念を理解するのが難しいことが示されています(Baron-Cohenら, 1985)。

脳の“予測”がちょっとズレる?「予測符号化理論」

このモデルでは、「脳は未来を予測して動いている」という考え方が基本です。ASDのある人は、この“予測”がうまく調整できないため、急な変化や予想外の出来事に対して強い不安を感じやすいとされます。

たとえば、いつもと違う順番で朝の支度をすると不安になったり、音やにおいの変化に強く反応してしまうことがあります。

🔍こんな研究も:
マーモセットというサルを使った研究では、ASDモデルのサルが「予測できない刺激」に慣れるのが難しいことがわかっています(Yoshidaら, 2016)。

全体より“細かいところ”に目がいく?「弱い中央性コヒーレンス理論」

この理論では、ASDのある人は「細かいことにすごく気づく」一方で、「全体の流れをつかむのが苦手」と考えられています。

たとえば、話の背景や文脈を読み取るのが難しかったり、文章の要約が苦手だったりするのはこの特徴と関係しているかもしれません。

🌟でもこれは強みにも:
パズルや積み木のような課題では、ASDのある人がとても高い能力を発揮することもあります(山本, 2005)。

他人の気持ちを“想像”しにくい?「仮想体験障害説」

人の気持ちを理解するには、「自分がその人だったらどう思うか」を想像する力が必要です。仮想体験障害説は、ASDのある人がこの“想像”の力を使いにくいという仮説です。

この考え方は、特に「共感が苦手」と感じられる行動の背景を理解する手がかりになります。

🧠最新の注目:
このモデルは“ミラーニューロン”という神経細胞の働きとも関係があるのでは、とも言われています。

環境が「安全」に感じられない?「ポリヴェーガル理論」

ポリヴェーガル理論では、人が「安全」と感じるか「危険」と感じるかが、無意識のうちに行動や反応に影響するとされます。

ASDのある人は、周囲の環境を「安全じゃない」と感じやすく、その結果として、同じ行動を繰り返したり、感覚刺激に敏感になったりすることがあると考えられています。

🌿大切なのは…:
安心できる環境をつくることが、ASDのある人の落ち着きやすさにつながるとされています(Porges, 2011)。

コミュニケーションは“両側の問題”?「二重共感問題」

これまで、ASDのある人の「コミュニケーションの困難さ」は本人の側の課題とされてきました。でも、この理論は「ASDの人と定型発達の人が“お互いに”理解し合うのが難しい」と考えます。

つまり、問題は「一方的」ではなく「すれ違い」の問題という視点です。

📣ポイント:
この考え方は、ASDのある人を「欠陥がある存在」ではなく、違ったスタイルを持った人と理解する手助けになります(Milton, 2012)。

理論はどれも“ひとつの視点”

ここまで紹介してきたように、ASDを説明する理論はそれぞれ異なる角度からASDの特徴を説明しています。どれも正解で、どれも限界がある。でも、だからこそ、いろんな理論を組み合わせて考えることが、より深い理解につながるんです。

💬まとめると: