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【強迫性障害】強迫性障害の児童・青年の生活体験

今回の論文

『強迫性障害の児童・青年の生活体験:解釈的現象学的分析』

Sravanti, L., Kommu, J. V. S., Girimaji, S. C., & Seshadri, S. (2022). Lived experiences of children and adolescents with obsessive–compulsive disorder: interpretative phenomenological analysis. Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health, 16(1), 1–13.

内容

小児期の強迫性障害(OCD)は,成人のOCDとは異なるものです。重篤な障害をもたらすこともあり,小児のOCDに関する質的研究はほとんどありません。

本研究は,OCDに悩む児童・青年における診断,治療過程,回復の意味についての主観的な経験を探り,この病気の概念モデルを提供することを目的としています。

本研究は,目的サンプリングによって選ばれた10名の児童・青年を対象とした質的研究です。インタビューは,半構造化インタビューガイドを用いて詳細に行われ,解釈的現象学分析を用いて分析されました。

この研究の目的は,解釈的な探求を通じて,参加者の世界に対する意味づけ,思考,感情,知覚を探索することです。

結果

解釈的現象学分析では,「病気の認知は時間とともに変化する」「スペクトラムの開示」「OCDの連鎖的影響」「治療は希望を与え,手助けする」「OCDを乗り越えていく」という5つの主要なテーマが導き出されまし た

本研究は解釈的現象学分析を用いてOCDを持つ子供や青年の生活体験を探求した初めての研究です。

病気や治療過程に対する認識は時間とともに進化し,回復を過程として捉えることが指摘されました。

今後は,「治療者に関連する障壁」「生徒と教師の関係」に焦点を当てた質的研究を行い,それぞれ臨床実践や学校政策に反映させることが可能になることが期待されます。

感想

強迫性障害に関する量的な研究はとても多いのですが,クライエントさん一人ひとりの体験を詳細に調査する研究は数少ないように思います。

量的な研究では見落とされがちな,「個の体験」を丁寧に拾い上げる質的な研究は,日々の臨床に反映しやすいものであり,今後は多くの質的研究が行われることが期待されます。

僕も質的研究に挑戦するので,ご協力してくださる方はぜひご一報ください٩( ᐛ )و