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トラウマのケアがなかなか進まないと感じる方へ:脳の仕組みから紐解く「怖さが戻る」理由と希望

カウンセリングルームでは安心できるのに、外に出ると辛くなることはありませんか?

過去の辛い出来事やトラウマによる強いストレス(PTSDなど)を抱え、日々を懸命に生きている皆様、毎日大変な思いをされていることと思います 。過去の記憶を乗り越えるために、専門家の助けを借りながら「エクスポージャー(曝露)法」と呼ばれる心理的なアプローチに取り組んでいる方もいらっしゃるかもしれません 。これは、怖いと感じる記憶や状況に少しずつ触れ、安全を確認しながら慣れていくサポートの手法です

しかし、一生懸命ケアに取り組んでいるのに、「相談室では落ち着いていられるのに、一歩外に出るとまた怖さが戻ってきてしまう」「なかなかすっきりと落ち着かない」と悩むことはありませんか?

もしそうだとしても、どうか「自分が弱いからだ」「努力が足りないからだ」とご自身を責めないでください。最近の研究では、回復への道のりがスムーズに進まないのは、あなたの意志の問題ではなく、「脳の自然な仕組み」によるものであることが分かってきています

心理学・科学的知見から見る「怖さが戻る」理由

カリフォルニア大学の研究者らによる最近の論文では、トラウマに対するエクスポージャー法がすべての人に十分な効果を発揮しきれない理由として、主に2つの脳のメカニズムを指摘しています

1. 脳が「場所」と「安心」をセットで記憶してしまうから

私たちは恐怖を和らげる(恐怖を消去する)学習をする際、脳はその学習が行われた「場所(文脈)」と一緒に記憶を保存します 。この「場所」の記憶には、脳の「海馬」という部分が深く関わっています

カウンセリングルームという安全な場所で恐怖を和らげることができたとしても、脳は「ここはカウンセリングルームだから安全だ」と学習している状態です 。そのため、一歩出て全く違う状況や日常の風景に戻ると、脳は「ここは安全な場所ではないかもしれない」と判断し、再び恐怖反応を引き起こしてしまうのです 。これを「恐怖の再燃」と呼びます 。場所が変わると怖さが戻ってしまうのは、脳があなたを守るために環境をしっかりと見分けている証拠なのです。

2. 脳の「アラーム」自体が過敏になっているから

トラウマとなるような強烈なストレスを経験すると、脳の中で危険を知らせるアラームの役割を果たす「扁桃体(へんとうたい)」という部分が過剰に活動しやすくなります

通常、心理的なケアでは特定の「怖い記憶(原因)」に対する反応を和らげていきますが、トラウマを抱えた脳は、その特定の原因だけでなく、ちょっとした新しい刺激や、本来は無害な出来事に対しても過敏に反応してしまう側面を持っています 。アラーム自体が鳴りやすくなっているため、特定の記憶に慣れるためのアプローチだけでは、全体的な過敏さを完全に鎮めるのが難しいことがあるのです

日常生活で心がけたい具体的な考え方

こうした科学的な事実から、私たちは日々の生活のなかでどのようなヒントを得ることができるでしょうか。

「怖さが戻るのは、脳の自然な仕組み」と知る

まず何よりも大切なのは、ケアの途中で不安や恐怖がぶり返してしまったとき、「またダメだった」と落ち込まないことです。先ほどお話ししたように、場所が変わることで恐怖が戻るのは、海馬が正常に働いて環境を区別しているからです 。また、過敏になってしまうのは過去の危険からあなたを守ろうとする扁桃体の働きによるものです 。これは「脳が一生懸命あなたを守ろうとしてくれているサイン」だと受け止め、ご自身を優しく労わってあげてください。

焦らず、新しいサポートの研究が進んでいることに希望を持つ

現在、この「場所によって怖さが戻ってしまう」という問題(文脈依存性)を解決するための、新しいアプローチの研究が進められています

例えば、エクスポージャー法を行う際に、海馬での「場所の記憶」の働きを一時的に和らげるお薬(スコポラミンなど)を併用することで、カウンセリングルームという特定の「場所」に縛られずに、新しい場所でも恐怖が戻りにくくなる可能性が、動物実験や人間の不安に対する研究で示されています 。まだPTSDを抱える方向けに完全に確立されたわけではありませんが、将来に向けた有望な方法として期待されています 。科学の進歩は、必ずあなたの痛みを和らげるための新しい光を見つけてくれます。どうか焦らず、ご自身のペースを大切にしてください。


こころの相談室UPからのご案内

トラウマや強い不安のケアは、決して一人で抱え込むものではありません。回復の道のりは一直線ではなく、良くなったり戻ったりを繰り返すのが自然なプロセスです。

「どうしても外に出るのが怖い」「カウンセリングを受けているのに効果を感じられず辛い」と感じたときは、いつでも私たち「こころの相談室UP」にお声がけください。最新の心理学的な知見に基づきながら、あなたの脳とこころのペースに寄り添い、一緒に安全な道のりを探していくお手伝いをさせていただきます。

少しでも心が重いと感じたら、以下のリンクからお気軽にご予約・ご相談ください。あなたの一歩を、私たちは温かくお待ちしております。

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参考文献

Markowitz, S., & Fanselow, M. (2020). Exposure Therapy for Post-Traumatic Stress Disorder: Factors of Limited Success and Possible Alternative Treatment. Brain Sciences, 10(3), 167. https://doi.org/10.3390/brainsci10030167