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「待てない」だけじゃない?ADHDの「動き出せない」脳の正体【最新研究】

「やるべきことがあるのに、ついスマホを見てしまう」

「締め切りギリギリにならないと動けない」

「休日はベッドから起き上がるだけで一日が終わる」

ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある方から、こうしたご相談をよくいただきます。

一般的に、ADHDといえば「衝動的で待てない」というイメージが強いかもしれません。しかし、僕の臨床経験では、むしろ「待てすぎる(いつまでも動き出せない)」ことで苦しんでいる方が非常に多いのです。

「自分はただ怠けているだけではないか」

そう自分を責めてしまう前に、知っていただきたい最新の知見があります。

実は、ADHDには「待てないタイプ」と「待てすぎるタイプ」があり、それぞれ脳の働き方が違う可能性が示されたのです。

今日は2025年に発表されたばかりの研究をもとに、あなたの「動けない」悩みの正体と、その対策について考えていきましょう。

最新研究:「報酬を待てるか?」には𝟱つのタイプがある

今回ご紹介するのは、スペインのアルメリア大学などの研究チームが『Translational Psychiatry』誌に発表した論文です。

【出典】

Fernández-Martín P, et al. (2025). Behavioral and neurofunctional profiles of delay aversion in children with ADHD. Translational Psychiatry.

この研究では、ADHDの子どもたちと定型発達の子どもたちを対象に、「海賊の宝探しゲーム」を使って「報酬を待つ能力(遅延割引)」を測定しました。

「すぐに少ないコインをもらう」か、「待って多くのコインをもらう」かを選ばせ、その振る舞いと脳の機能的なつながり(fNIRSで測定)を分析したのです。

その結果、ADHDの特性は「待てない」一色ではなく、以下の𝟱つのプロファイルに分類できることがわかりました。

  1. 𝗖𝗼𝗻𝘃𝗲𝗻𝘁𝗶𝗼𝗻𝗮𝗹(標準型): バランスよく待てる。
  2. 𝗖𝗼𝗻𝘃𝗲𝗻𝘁𝗶𝗼𝗻𝗮𝗹-𝘀𝘁𝗲𝗲𝗽(やや衝動型): 少し待つのが苦手。
  3. 𝗦𝘁𝗲𝗲𝗽(衝動型): 「今すぐ欲しい!」と報酬の価値が急激に下がる。いわゆる典型的なADHD像。
  4. 𝗦𝗵𝗮𝗹𝗹𝗼𝘄(緩やか型): 時間が経過しても報酬の価値があまり下がらない。
  5. 𝗭𝗲𝗿𝗼(平坦型): 全く価値が下がらない(どれだけ時間がかかっても評価が変わらない)。

ここで非常に重要な発見があります。

多動・衝動性が強いタイプ(ADHD-C)の約𝟳𝟴%は、予想通り「𝗦𝘁𝗲𝗲𝗽(衝動型)」に分類されました。

一方で、不注意が優勢なタイプ(ADHD-IN)は、約𝟰𝟮%が「𝗭𝗲𝗿𝗼(平坦型)」や「𝗦𝗵𝗮𝗹𝗹𝗼𝘄(緩やか型)」に分類されたのです。

つまり、不注意優勢のタイプでは、「待てない」のではなく、むしろ「過剰に待ってしまう(価値が変わらない)」という特性を持つ人が一定数いることが示唆されました。

僕の臨床での見立て:なぜ「待てる」ことが苦しいのか?

「待てるなら良いことじゃない?」と思われるかもしれません。

しかし、この「𝗭𝗲𝗿𝗼(平坦型)」や「𝗦𝗵𝗮𝗹𝗹𝗼𝘄(緩やか型)」というデータは、カウンセリングの現場で多くのクライアントさんが訴える苦しみと合致します。

通常、私たちは時間が経つほど報酬の価値が下がる(早く欲しくなる)ため、「今すぐやらなきゃ!」という焦りや意欲が自然と湧いてきます。

しかし、「いつまで待っても価値が変わらない(Zero Discounting)」という脳の状態は、「今やるべき理由」を感情的に感じ取れない状態と言えます。

これが日常生活でどう現れるかというと:

論文では、このタイプは脳のネットワーク(FPNやDMN)の接続が弱いことも示されています。

これは「忍耐強い」というよりは、「時間の流れを感じにくい」「変化に対して硬直してしまう」状態に近いのかもしれません。

タイプ別の対策:意志ではなく「仕組み」を変える

あなたが「待てない」タイプか、「動けない」タイプかによって、有効な対策は真逆になります。

𝗔. 「つい他のことをしてしまう」衝動タイプ(𝗦𝘁𝗲𝗲𝗽型)向け

あなたの課題は「ブレーキ」です。脳内ブレーキが効きにくいので、物理的な障害物を置くのが正解です。

𝗕. 「着手できず固まってしまう」硬直タイプ(𝗭𝗲𝗿𝗼 / 𝗦𝗵𝗮𝗹𝗹𝗼𝘄型)向け

あなたの課題は「スターター(初動)」です。待っていてもやる気エンジンはかかりません。「完璧な状態」という幻想を手放す必要があります。

まとめ

今回の研究は、ADHDにおける「動けない」苦しさが、単なる怠けや甘えではなく、脳の報酬処理のパターンの違いによるものであることを教えてくれます。

衝動的に動いてしまうことも、いつまでも動き出せないことも、どちらも脳の特性に根ざした現象です。

「自分はダメだ」と人格を責めるのではなく、「自分の脳はどのタイプの燃料で動くのか」を理解することから始めましょう。

あなたの脳のタイプに合ったエンジンの回し方を、一緒に探していければと思います。

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