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【論文紹介】ADHD児の行動療法:エジプトでの革新的なアプローチとその意義

はじめに

ADHD(注意欠陥/多動症)は、子どもたちの学業や日常生活に大きな影響を与える発達障害です。この症状に対する効果的な治療法の開発は、多くの研究者や臨床家にとって重要な課題となっています。エジプトで行われたこの研究は、ADHD児とその親を対象に行動訓練プログラムの効果を検証したもので、新たな治療法の可能性を示唆しています。

研究の概要

この研究は、エジプトの2つの精神科病院の外来でADHDと診断された50人の子どもとその親を対象に行われました。参加者は無作為に、12回の行動訓練プログラムを受けるグループと通常の家族カウンセリングを受ける対照グループに割り付けられました。

行動訓練プログラムの内容

行動訓練プログラムでは、以下のような内容が含まれていました。

  1. ADHDに関する知識
  2. ストレス対処法
  3. 問題解決スキル
  4. 時間管理
  5. 行動管理

これらのトレーニングは週1回の頻度で実施され、親がADHD児の行動問題に対処するための技法を学びました。

対照群の介入

一方、対照群は病院の社会福祉士による通常の家族カウンセリングを受けました。

研究の結果

行動訓練プログラム群では、介入後に子どもの攻撃的行動、社会的交流、常同行為の項目で対照群と比較して有意な改善が見られました。また、行動特徴の全体スコアが有意に改善していることが示されました。一方、対照群では有意な変化は見られませんでした。

研究の意義

この研究は、エジプトの地域において、ADHD児の行動療法として包括的な行動訓練プログラムが有効であることをランダム化比較試験により実証しました。Evidence-basedな行動療法プログラムを臨床で実践することの重要性が示唆されています。

研究の限界と今後の展望

参加者数が50人と少なめであり、介入期間が3ヶ月と短期間であるため、より大規模な研究や長期的な効果を検証することが望まれます。

専門用語解説

ADHD児の行動療法に関する研究をより深く理解するために、以下に主な専門用語の解説を記載します。

  • ADHD(注意欠陥/多動症): 不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達障害。
  • 行動訓練プログラム: ADHD児の行動問題に対して、親に行動療法の技法を教育するプログラム。
  • Child Behavior Assessment Instrument: 子どもの行動特徴や問題をスクリーニングするために開発された評価尺度。
  • 攻撃的行動: 他人に危害を加えるような行為。ADHD児には共存症としてみられることがあります。
  • 社会的交流の障害: 他者と適切に交流する能力の低下。ADHD児の共存症として見られることがあります。
  • 常同行為: 身体の特定部位を反復的に動かすなどの行為パターン。自閉スペクトラム症で多く見られるが、ADHD児にも見られることがあります。

まとめ

この研究は、ADHD児の行動療法としての行動訓練プログラムの有効性を科学的に実証した意義深い研究例であり、今後のADHD支援に資する知見が得られたと結論づけられます。このような研究は、ADHD児とその家族にとって希望の光となることでしょう。

論文

Hamed, A. E. M., Osman, Z. A. E. H., & Abd El-Fatah, W. O. (2023). The effect of behavioral training program for parents on disruptive behavior among children with attention deficit hyperactivity disorder. Egypt Journal of Neurology, Psychiatry and Neurosurgery, 59, 137. https://doi.org/10.1186/s41983-023-00738-z