シングルケース実験計画法(SCED)は、個々のケースや小規模なグループに対する介入の効果を評価するための研究デザインです。この手法は、特に教育や臨床心理学の分野で重宝されており、個別の介入がもたらす変化を詳細に捉えることができます。
SCEDのデータ分析においては、視覚的分析が中心的な役割を果たします。しかし、分析者間での判断の一貫性に欠けるという課題があります。これを解決するために、保守的二重判定基準や目的ルールを示唆する視覚化支援ツールなどが提案されています。
SCEDのデータを統計的に分析するための様々な指標が紹介されています。これには、データの重複度に基づくTau系統の指標や、対数応答比、回帰モデルに基づく指標などが含まれます。これらの指標は、介入の効果を定量的に評価する上で非常に有用です。
複数のケースにわたる介入効果の一般性を評価するためには、事例間の標準化平均差を用いたメタ分析的統合や、階層線形モデルに基づく事例間標準化平均差が有効です。これにより、異なるケース間での効果の比較が可能になります。
研究の目的に応じて最も適切な指標を選択することが重要です。R言語などの統計ソフトウェアを活用することで、これらの計算を容易に行うことができます。
SCEDの発展に伴い、視覚的分析と統計的分析を適切に組み合わせることが今後の課題となっています。本論文は、SCEDにおける介入効果の評価と解釈に役立つ指針を提供しており、今後の研究においてさらなる分析手法の改善が期待されます。
個人や小規模のグループに対する介入効果を評価するための研究デザイン。個々の変化を詳細に捉えることができるため、教育や臨床心理学でよく使用されます。
データのグラフからトレンドやバラつきなどの視覚的特徴を分析すること。SCEDではこの方法が主に用いられますが、分析者間での判断の一貫性を高めるための補助手法も提案されています。
視覚的支援ツールを用いて視覚的分析を補助する手法。より一貫性のある分析を目指します。
データの重複の程度に基づいて効果量を測定する指標。Tau-Uはトレンドを考慮した効果量の指標として特に注目されています。
介入前後の値の比の対数をとった指標。パーセント変化に変換可能で、効果の大きさを評価するのに用いられます。
複数レベルのデータを分析する統計モデル。事例間での効果量の比較に有用です。
事例間で効果量を比較するための指標。メタ分析的統合や階層線形モデルを用いて、複数のケース間での効果の一般性を評価します。
介入の導入と撤廃を繰り返すことで効果を評価するSCEDのデザイン。
複数の参加者に対して介入の導入時期をずらすことで効果を評価するSCEDのデザイン。
論文
竹林 由武, 認知行動療法研究シングルケース実験デザインにおける介入の有効性評価, 認知行動療法研究, 2022, 48 巻, 2 号, p. 145-154