境界性パーソナリティ障害(BPD)は、感情の不安定さ、衝動性、そして何よりも対人関係の問題を特徴とする複雑な精神疾患です。BPDを持つ人々は、他者との関係を築くことに苦労し、しばしば信頼の問題に直面します。しかし、この信頼プロセスの障害がどのようにしてBPDの対人関係の問題に影響を与えるのか、そのメカニズムはまだ十分に理解されていません。
今回紹介する学術論文は、BPDを持つ人々の信頼プロセスの障害を多面的に解明し、その包括的なモデルを提案しています。このモデルは、BPDの対人関係の問題を理解し、治療に役立てるための重要な一歩となるでしょう。
以下では、この論文の主要な内容を詳細に紹介し、BPDの信頼プロセスに関する新たな理解を深めることを目指します。
BPDの核となる症状の一つは、不安定な対人関係です。著者らは、信頼プロセス(他者の信頼性の評価とその更新)の障害が、BPDの対人関係の問題と深く関連していると指摘しています。信頼プロセスを理解することは、BPDの治療において感情の不安定さや衝動性、攻撃性に焦点を当てるだけでなく、対人関係の問題にも対処するのに役立つと述べています。
著者らは、信頼プロセスを以下のような多段階のモデルで説明しています。
著者らは、それぞれの段階におけるBPD特有の逸脱に関する証拠を概説しています。
著者らは、このモデルがBPDの信頼プロセス障害の段階を特定するのに有用であり、他の精神疾患との比較研究にも利用できると述べています。また、信頼プロセスの評価は、BPD患者の治療遵守の予測にも役立つ可能性があると示唆しています。
この論文をより深く理解するために、以下にいくつかの重要な専門用語を紹介します。これらの用語は、BPDや信頼プロセスに関する研究を理解する上で欠かせないものです。
これらの用語を理解することで、BPDと信頼プロセスの複雑な関係についてより深い洞察を得ることができます。
論文
Preti, E., Richetin, J., Poggi, A., & Fertuck, E. (2023). A model of trust processes in borderline personality disorder: A systematic review. Current Psychiatry Reports, 25(3). https://doi.org/10.1007/s11920-023-01468-y