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全般性不安障害の心理療法で脱落とアウトカムを予測する患者因子とは?

はじめに

全般性不安障害(GAD)は、さまざまな状況で過剰な不安を感じる一般的な精神疾患です。GADの治療には薬物療法や心理療法が用いられますが、同じ治療を受けても患者によって反応が大きく異なることがあります。そこで今回は、GADの心理療法における脱落とアウトカムの患者予測因子を探索した最新の研究を紹介します。

研究の概要

この研究では、GADの治療における認知行動療法(CBT)と感情焦点化療法(EFT)の有効性を比較する無作為化比較試験のデータを用いて、患者の特性と脱落・アウトカムの関係を分析しました。58人のGAD患者を対象に、ロジスティック回帰分析と階層的線形回帰分析を行いました。

脱落に関する結果

分析の結果、全データでは併存する人格障害が高い脱落率を予測することが明らかになりました。人格障害を持つ患者は、治療からドロップアウトする可能性が高いため、特別な注意が必要かもしれません。

アウトカムに関する結果

障害を持つ患者は、抑うつ症状と全般的な苦痛の改善が少ないことが示されました。また、CBT条件では男性の方が不安症状と全般的苦痛の軽減が大きく、EFT条件では年齢が高いほど不安症状の改善が大きいという結果が得られました。これらの知見から、CBTとEFTでは最も恩恵を受ける可能性の高い患者群が異なる可能性が示唆されました。

研究の意義と限界

本研究は、GADの心理療法における脱落とアウトカムの患者予測因子を探索し、特にEFTに特化した因子を初めて検討した点で新規性があります。一方で、参加者数が限られていたため、結果の解釈には注意が必要です。また、元の研究で収集された予測変数の選択に限りがあったことも限界点として挙げられます。

おわりに

今回紹介した研究は、GADの心理療法で脱落しやすい患者や、特定の治療法の恩恵を受けやすい患者の特徴を明らかにしました。これらの知見は、より個別化された治療計画の立案に役立つ可能性があります。今後は、より大規模な研究でこれらの結果を検証していくことが期待されます。

参考文献

Jones, F., Timulak, L., Keogh, D., Chigwedere, C., Wilson, C., & Ward, F. (2024). Client predictors of dropouts and outcomes in psychotherapy for generalized anxiety disorder: An exploratory study. Person-Centered & Experiential Psychotherapies. Advance online publication. https://doi.org/10.1080/14779757.2024.2335383